中央アルプス 登山記録

【第2章】中央アルプスを越える⑥~パトカーと信州そば~

 

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【第2章】中央アルプスを越える⑤~霊神と山間地の静けさ~

    山行データ52歳。2005年6月16~19日。新宿~木曽福島へ列車。16日はバンガロー泊、17日は無人避難小屋泊、18日は木曽駒ヶ岳をへて伊那市泊。19日は高遠まで歩き、帰 ...

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山行データ

52歳。2005年6月16~19日。新宿~木曽福島へ列車。16日はバンガロー泊、17日は無人避難小屋泊、18日は木曽駒ヶ岳をへて伊那市泊。19日は高遠まで歩き、帰京。
★御嶽山(3,067メートル)を越えた翌年にあたる。3,000メートル峰はこのルートにはないが、南アルプスにつなぐために、中央アルプスの最高峰・木曽駒ヶ岳(2,956メートル)を踏む。

 

 

マチ中を登山者が歩けば

御嶽山では一般道に出てから木曽福島まで、8時間ばかり歩かなくてはなりませんでした。

地図を見て覚悟はしていましたが、とにかく長い。

 

登山靴というのは山道のでこぼこや大小の岩などを歩くようできています。

市街で履くビジネス靴で登山はダメなほどではありませんが、登山靴で平坦な舗装を長時間歩くのは体のバランスをひどくいびつにします。
負担がきつい。

 

木曽福島駅まで残り3時間くらい(午後9時あたり)から、足の裏が悲鳴を上げていました。

痙攣するように固まってくるのです。

 

どうにもたまらず靴下まですべて脱ぎ、縁石の角やガードレールの丸い横棒に足の裏を押し当ててマッサージをしては緊張をだましだましし、あと少し、あと少しと暗闇につぶやきながらリュックを背負いなおしました。

 

それに比べれば、伊那市街への今日の足取りははるかに短い。

 

桂木場から伊那市駅まで直線で8kmくらい。

くねくねしても12km程度。

3時間かそこらのものでしょう。

 

市街がまだにぎやかなうちに宿泊地を決められそうです。

深夜の木曽福島市街のときのように、警察のパトカー出現に心臓がドキリとすることもないでしょう。

 

深夜を歩けばパトカーが通る

街路灯の明かりが間隔を置いてぼんやり。

 

木曽福島駅に近く何もかもが眠りこけているように静かな市街を歩いていると、背中に車の気配がしたかと思うと忍び足のようにして、パトカーが私の脇を追い抜いていくのでした。

 

徐行運転ほどの速度です。

 

私はリュックを背に負う登山者。

午後11時半ごろです。

 

パトカーがちょっと先で停車し警察官が出てきて、私が不審者かどうかを判断するための質問の一つ二つくらいをしても、まぁあり得ることだと覚悟しました。

 

空き巣狙いではないことくらいは外見と状況で即断できるにしても、こんな夜遅くに一人で歩く中年登山者に漠とした関心を持っても不思議はないと思うのです。

 

とはいうものの、やましいことはしていないのに、パトカーや警察官が手の届く距離に接近してくると、それだけで心拍数が上がるのはどういう習わしなのでしょう。

 

ーー言うことを聞かない子はおまわりさんに叱ってもらう。

 

子供のころのこうした警察官の権威を借りた親のしつけが、心理的なおそれとして定着しているのかな。

 

警察官が私に向かって、

ーーなんでこんな夜遅くに、そんな恰好で歩いているのか。

 

いきなり問い詰めたら完全に不審者扱いですから、もう子供ではない中年男の反感を買って喧嘩のタネになります。

経験ある警察官なら柔らかに、

ーーいやぁ、重そうですね。大丈夫ですか。木曽福島の駅までならあと少しですよ。

 

くらいの手練手管を使うでしょう。

 

ところが、私の心理の揺れと刹那の想像会話になど無関心のように、パトカーはその速度のまま赤色灯を所在なさそうにくるくるさせながら、遠ざかっていくのでした。

 

木曽福島御岳山木曽駒ケ岳の登山口です。

この程度の登山者を見慣れているのかもしれません。

 

パトカーには普通二人が乗っていますから、遠ざかる車内で先輩と後輩とでこんな会話くらいしているかもしれません。

ーーもう午前零時だというのに、あの登山者、どこで泊まるつもりでしょうね。

ーーああいう人たちは、どこでも寝られるものだ。リュックの中には寝袋が入っているしね。

 

信州そばと伊那谷

伊那市へ向かう今は心身とも軽々です。

夕方ですが、まだ明るい。

パトカーの気配はつゆほどもなく、「行者そば」と黒書された白い標柱が道路わきに見つけました。

 

由緒書きによれば、信州そばの発祥の地はここだというのです。

 

へぇ、です。知らなかった。

 

信州」という言葉と一番相性がいいのが、何といっても、そば、つまり「信州そば」だと思います。

信州と言えば、まずそば。

 

「信州みそ」「信州リンゴ」なども、それだけで全国に通じるブランド名ですが、「信州そば」は最高峰の位置を確保していると思います。

 

そばは私の大好きな食べ物の一つです。

 

立て札一つから、山々に囲まれた信州の高原に広がる白花のソバ畑を想像します。

 

信州の風土と旅情を象徴する秋の景色。

その原点(元祖)が伊那谷だというのです。

 

白い標柱から少し離れた鳥居にはしめ縄と白い御幣が二つ垂れ、奥には神楽殿ふうの吹き抜けの平屋があります。そばにかかわる催事の会場なのでしょうか。

おいしいそばを食べたいなぁ。

信州そば発祥の地の案内柱
(信州そば発祥の地の案内柱。伊那谷には独特の食がある。)

 

 

なかなかいけるザザムシ、いなご、蜂の子

そばが信州全域のブランドなら、伊那谷の食べ物というとゲテモノ扱いで、ザザムシ、蜂の子、イナゴなどが話題になります。

 

遠い先祖の大昔から、知恵と工夫を凝らして何物をも食べてきた強靭な食文化が保たれてきたのが伊那谷なのでしょう。

 

たいていのものは気になりませんから、それぞれ口にしたことがあります。

イナゴはそのまんま羽を広げて飛ぶかというような恰好で醤油色をした佃煮になっていて、足のとげがいささかチクチクしたのですが、砂糖の加減もよくておいしくいただきました。

 

それらは今では珍味扱い(佃煮)で土産物店に並ぶくらいですから、伊那谷の食文化は一般家庭から消えかけているのでしょう。

ローメンという伊那食もあります。

 

中華麺ふうの蒸し麺をマトン入りの味付けで食べるので味にクセがあり、好みは分かれそうですが、私はけっこう好きです。

 

こちらも、信州そばほどの全国区の名声までは得ていません。

 

いわゆるB級グルメという部類に入るのでしょうが、こういう地域限定の味自慢というのは、その土地柄の個性なのですから、味わってみるというものです。

信州そば畑_中央アルプス6
(信州のそば畑は9月に白くなる:飯田市近郊)

 

 

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列車
【第2章】最終回 中央アルプスを越える⑦~駅そばの小景~

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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