南アルプス 登山記録

【第7章】南アルプス越え③~戸台川から無人の丹渓新道へ~

 

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    山行データ2005年7月26日~30日、53歳。 単独。伊那市・高遠から入山。戸台の山荘泊の後、北沢をさかのぼり仙丈ヶ岳、通称バカ尾根から野呂川に下り、北岳へ登り返し広河原 ...

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山行データ

2005年7月26日~30日、53歳。
単独。伊那市・高遠から入山。戸台の山荘泊の後、北沢をさかのぼり仙丈ヶ岳、通称バカ尾根から野呂川に下り、北岳へ登り返し広河原へ下山。
3,000m峰は仙丈ヶ岳(3,033)と北岳(3,193)。

 

戸台から丹渓新道へ

戸台の宿の女性主人が、もう8時ですよと部屋の外から気をもむ声をかけてきます。

けれど、今日は戸台川をさかのぼり丹渓山荘まで。

 

仙丈ヶ岳へとつながる丹渓新道の途中にある山小屋です。

 

そこで、テントを張ります。

山荘は営業していません。

 

バスで北沢峠まで入るようになってから登山者がこのルートから遠のいてきたからです。

昨夜の宿泊はわたしだけ。

 

・・・雨の中を宿にリュックをおろしたのは、昨日の午後。

 

三峰川の支流に左折し南アルプススーパー林道のバス発着所を過ぎ、さらに右手の林道入口ゲートをやり過ごしてきたのです。

スーパー林道へ入るゲート
(スーパー林道へ入るゲート)

 

新宿から夜行列車に乗り、岡谷に着いたのが午前4時。

ホームの小さな待合室の中で、長椅子に寝袋を広げて仮眠。

 

通勤通学の人たちに紛れながら飯田線伊那市駅着、バスで高遠まで移動してから歩いたので、さすがに疲れていました。

丹渓新道は初めてですが、余裕のある行程なので朝寝坊をしたのです。

 

人っ子一人いない河原

三峰川本流の土砂対策工事の宣伝パネル
(三峰川本流の土砂対策工事の宣伝パネル)

 

大型トラック
(大型トラックが通るたび、道路端に寄って避ける)

 

戸台

二つの川の合流地点が狭いながらに、少し開けたところです。

 

小さな川を挟んで建物が二つ三つありますが、人の生活臭がしません。

 

戸台北アルプスにたとえると、燕岳~槍ヶ岳~上高地の表銀座ルートの登山口・中房温泉でしょうか。

 

交通の便、宿もあり登山者が身支度を整えるところです。

 

昨日の、宿の主人との問わず語りを思い出します。

女性は高齢。一人で切り盛り。

 

古くはご主人と共同で、夏山の最盛期には学生アルバイトの手を借りることもあったそうです。

戸台で営業しているのは、ここだけになっています。

 

女性によると、気晴らしにもなるし、体がもつうちはと家族に送ってきてもらい、客があれば受け入れるくらいの緩やかな客商売のようです。

釣り客もいるようです。

 

宿そばの小さな渓流に釣り竿をたてる男性一人を見かけました。

 

本筋の戸台川の岩肌では第二次大戦のころ、鉱物のマンガン採掘が行われたと、女主人はいいます。

 

坑道跡に興味はわきますが、探し回る時間はありません。

スーパー林道を取れば歩きやすいし、時間は節約できるかも知れません。

 

けれど、山中に分け入るのに、アスファルトの道は可能な限り避けたい。

 

先人が切り開いた足跡が親しい。

リュックを背負う旅には、でこぼこの山道が歩きやすい。

青空が澄んだ大気の奥に輝いています。

 

スーパー林道を仰げば

岩石や土砂が占める広い谷底の中央に、キラキラと白く眩く輝く川が、ザァザァと雨降りのように流れています。

緩いのぼり。

 

前後左右を見回しても、わたしは一人きりです。

 

昨日立ち寄ったスーパー林道のバスターミナルでは、雨がちでした。

 

「この雨でバス便行は運転中止なんですよ・・・」

 

係員がわたしに気の毒そうにしてくれました。

 

「バスに乗らない山歩きだから、いいんです」

 

という会話を交わしていました。

一夜明けてこの天気なら、バス便は通常運行でしょう。

 

事実、やがて、対岸(左岸)の険しい崖の上を、バスの窓がまぶしく反射するのを仰ぎました。

あぁあ、とつぶやいています。

 

東京都内への通勤は地下鉄、仕事も地下鉄などの交通網を利用するわたしの日常に引き戻されるような一瞬です。

 

日常の時間割り振りが、移動の速さによって決められているのです。

 

都会で歩くことは、交通機関で移動するときの補助でしかなくなっています。

 

わたしも末席にいる中高年が登山に目覚めて久しく、依然として登山熱が軒昂だというのなら、交通文明が貢献する便利さへの後ろめたさの表現なのでしょう。

 

遙かな先祖のおサルさんんは、大胆にも樹上から危険極まりない地上に降り、冒険の旅に出たそうです。

 

となれば、そのDNAをどこかに宿すわたしたちは、歩け歩けという内側からのシュプレヒコールに奮起を促されているのかも知れません。

 

ことに衣食住の一切合切を背に負うテントに宿する山歩きは、アスファルト、コンクリート、プラスチックの鎧で身固めした大都会とは真反対、アナログです。

 

瀞に岩魚を期待する

けれど、コンクリートは山中にも進出しています。

延々と堰堤が現れます。

堰堤
(堰堤は連続して上流まで)

 

その気になれば、オフロード車が相当な上流まで入り込めそうです。

 

わたしの視線は、流れの中の素早い動きを期待し、胸がキュンキュンと震えます。

 

岩魚の魚影を探しているのです。

たっぷりと岩魚を釣り、串刺しの塩焼きにする。

 

沢で缶ビールを冷やし、あぶらがしたたり香り立つ岩魚に塩をふり、舌に熱くのせてビールを飲み下す。

沢そばにテントを張り、たっぷりとあるそういう午後の時間はなんと豊かなことでしょう。


(素晴らしい瀞に岩魚を期待する)

 

絶好の瀞にやってきました。

段差のある流れが落ち込み、白く細かな水疱が渦巻いている。

 

川岸の折れ枝を拾いテグスを装着。

エサは煮干し。

流れの落口からエサをたらし込み、瀞に遊泳させ、下流に送り出す。

 

一度、二度、三度・・・ピクリともしない。

まったく魚信がない。

 

ここまで、魚影にしても、ただの一つも視線をかすめないのでした。

 

連続する堰堤の出現とともに、戸台川から魚影は消えてしまったかのようです。

 

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【第7章】南アルプス越え④~らしさ、の千丈ヶ岳を越える~

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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