登山 白山

白山の1~残雪の・笈ケ岳に行く(上)

 

山行データ

笈ケ岳(1841m)は白山国立公園の北端を占める孤高の峰。 金沢市内のアパート出発、白山スーパー林道沿いの山毛欅山から入山。残雪の山中テント泊。 二日目に冬瓜山を経て笈ケ岳山頂。同じルートで下山。 夏道がなく登山は残雪期に限られる。数年の準備を経て1994年4月16、17日。 42歳。単独。

 

 

白山と出会う

この何年かというもの、夏には高山植物の花々が咲く高山を歩くのが、私たち夫婦の恒例になっています。

余話で先に紹介した北海道最北の離島礼文島・礼文岳、利尻島・利尻岳(2017年)もその流れです。

今年(2019年)はテントを根城に白山山頂・御前ヶ峰(2,702m)も踏み、南の尾根をたどって別山(2,399m)も訪ね、ブナ林が素晴らしいチブリ尾根を下る二泊三日の道のりを練っています。

白山とのつながりは20数年前のこと。 仕事の転勤で加賀百万石の前田利家ゆかりの北陸金沢に何年間か暮らしたときです。   白山
(初冬に白山が白く輝く=旧白峰村の丘から)  

私の山旅というのは現地べったり主義といいますか、住んだ土地に密着した山岳へ出向くものがほとんどです。

ことさら深い関心を持たなかった白山でしたが、富山県高岡市の次に金沢市民になったのでした。

30歳代も後半のことです。

高岡暮らしのころは富山県の立山周辺がホームグラウンドでした。

そのころの白山についての私の知識と言えばこうです。

――立山富士山と並べて日本三霊山と呼ぶ向きもある。 ――白山信仰を敷衍する白山神社が全国各地に広がっている。私の郷里である愛知県にも白山神社がたくさんある。

それほど、白山とそこに鎮座する神々は日本全国に染み渡っているのです。

 

 

白山連峰と呼びたい

白山初登山は夏山開きの7月1日。

雪深い北陸でも、里はすっかり夏めいていましたが、森林限界を過ぎた白山の高いところには、まだべったりと残雪がはりついていました。

前日は山頂直下の室堂山荘に泊まり、雨混じりの凍える翌朝、震え濡れながら山頂の祠を参拝したのでした。

それ以来、小学生だった娘とテント泊をしたり、加賀禅定道をたずねたり釈迦岳をめぐる一日縦走などをしたりしてきました。

カタクリ白山
(ブナ林にカタクリの花が咲くと春到来=加賀禅定道)  

最後の白山登山は約8年前、岐阜県石徹白からたどる美濃禅定道を経る二泊三日、無人の避難小屋、テント泊との山旅でした。

霧の中に現れたクロユリの群落が新鮮でしたね。

白山の世評は、北アルプスの剣岳・立山・薬師岳、あるいは槍穂高連山という豪快かつ長大な山容ではなく、女神が降臨するおっとりとした独立峰という見立てです。

ロッククライミングで知られる北アルプス前穂高岳東壁剣岳南アルプス北岳バットレスのような大岩壁があるわけでもありません。

しかしあちこち歩いてみれば傍目ほど軽やかに歩ける山岳ではないことが知れます。

峰の数も多い。 尾根の派生もいくつかあります。

白山連峰」がふさわしいと、そう呼ぶ人たちもいるくらいです。

本峰の御前ヶ峰だけでなく、多くの峰があることから、私も白山連峰を好みます。

歩いた山はたいがい好きになってしまいますが、白山の自然も歴史も興味の尽きないいい山なのです。

笈ケ岳(1,841m)は、まさに白山を連峰と呼称することがふさわしいと断言できる要の一座であり、狙い定めて山頂を踏んだのです。

笈ケ岳の魅力に欠かせないのは、夏道のない山だということです。

猛烈なブッシュを固い残雪が圧している春先の限られた期間だけがチャンスなのです。

情報も限られているので、まず金沢市内の医王山(939m)に積雪期に何回も出かけ、かんじきの使い勝手や雪中の山歩きを経験するところから始めます。

 

 

医王山から笈ケ岳へ

金沢市を東から抱え込むように位置する医王山は、富山県境でもある尾根にまで自動車道があるくらいで、ブナ林散策ができる里山です。

しかし、冬はまったく油断がならないのです。

日本に海に面した北陸地方の特色として、冬には日本海を渡って降る重く湿った雪がたっぷりと積もるのです。

医王山への林道も積雪に埋もれ、山スキー、かんじきを使うことになります。

山頂にある高さ5mくらいの展望やぐらも積雪に埋まる。

日帰りでちょうどいい行程です。

山頂直下と目安にするところでスキーからかんじきに履き替え、笹を下草にするブナ林を藪こぎしてよじ登るのです。

胸を斜面に押し付けるような垂直の感覚です。

山頂から見晴るかす午後の日本海が、海面近くに浮上した巨大魚が金色のうろこを無数に翻しながら波打たせているかのようです。

加賀百万石のプライドが、海の光に集約されているのでしょうか。

笈ケ岳医王山より標高が千メートルも高い。

真冬の積雪量はすごいはずです。

医王山で雪山になれながら、時期を待てばいい。

季節は四月。雪解けが進み、医王山での経験が生かせるはずです。

笈ケ岳には夏道がないからです。

春めく気温で雪面は引き締まり、真冬の日本海を渡った日の激烈な風雪はすでにありません。

夏の猛烈な藪漕ぎは日高山脈で経験していて、たった2mくらいの距離で前後する仲間たちがブッシュに埋もれてまったく見えず、声だけはきこえるというすさまじいものです。

それはそれで醍醐味ですが、笈ケ岳には雪道を恵みに一人で行くつもりです。

 

 

深く静かに、笈ケ岳と大笠山

登山道がない!わくわくが抑えられません。いいですねぇ。

笈ケ岳の山頂が、石川、富山、岐阜県の境界というのも、気が利いています。

笈ケ岳というのは奥まっていて、金沢市街はおろか視界を広くとれる海岸線からでも、山容を目にすることは無理です。

その前年の春だと思いますが、ルート確認を兼ねて、白山北部の一里野スキー場の尾根まで行ってみるとよく見えました。

スキー場の施設を利用すると、標高1,050mの終点駅まで運んでくれます。

石川県岐阜県を峰越えでつなぐ白山スーパー林道沿いにあるスキー場です。

一里野近くからは白山御前ヶ峰へ導く三つの禅定道(加賀・美濃・越前)のうちの一つ、加賀禅定道に取り付けます。

写真でいうと、中央左の濃い緑の盛り上がりが山毛欅山

文字通りブナ林が見事です。その右手奥に白い残雪をまとう端正な三角が大笠山(1822m)。

笈ヶ岳白山
(笈ヶ岳遠望:手前左が山毛欅山、右が冬瓜山。奥左の白い峰が大笠山、右が笈ヶ岳) 

名の通り、笠を大きく広げた伸びやかさが感じられます。

大笠山へは石川県側と富山県側から登山道があります。

笈ケ岳に先だち、初夏に金沢川から夏道で登っています。

大笠山の山頂にたったとき、眼前の笈ケ岳への強い思いがこみ上げてきたものです。

写真の大笠山の右手に、やや似てはいるがごつくそびえるのが笈ケ岳。残雪が大笠山ほど目立ちません。

標高は笈ケ岳のほうが約20m高い。

写真の角度だと双耳峰のように見えます。

大笠山から笈ケ岳への登山道はないのです。

二つの山は石川県出身で『日本百名山』の著者深田久弥が、百選に入れたいが登っていないので外したとあとがきで告白しています。

 

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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