登山余話 登山記録

【登山余話1】礼文岳とハマナス

 

山行データ

2016年8月26日。63歳。妻と同行。台風10号が本州南から北上し、東北地方に上陸しようかという動きのころ。

 

炎夏脱出

礼文岳登山口
(礼文岳への登り口付近。ブッシュにZ形に登山道が刻まれていく)

 

洪水のようなリオ五輪ニュースが去っても、名古屋の炎夏は続きます。

脱出。

 

どうせなら日本で一番北の離島で避暑をと、礼文島、利尻島に出かけます。

 

(礼文島には山はあるかしらん。あれば登ってやろう)

 

調べると、礼文岳(490m)が最高峰。

麓から往復4時間ほど、手ごろです。

 

礼文島に来ますと期待以上に涼しい。

ところどころの船溜まりに小型漁船が浮かびますが、稲穂のたわむ水田も、季節の野菜が茂る畑も目に入りません。

台地が波打ち際まで迫り、人家が一列に並びます。

礼文岳山頂付近
(奥が礼文岳。山頂付近はハイマツが低く生い茂る)

 

礼文岳前夜

礼文岳への登山道は、ダケカンバや針葉樹、ナナカマド、ササなど、北アルプス登山などでなじみの草木の間を縫います。

海岸の登山口から正味490mの標高差。

海と山頂がつながる歩きには、何にも代えがたい手ごたえがあります。

 

前夜はひどい風雨でしたが、青空が満ちてきます。

妻と、どちらが晴男、晴女かと自慢しあって快調です。

 

「サハリンが山頂からは見えるんじゃないかと期待してるんです」

 

民宿で同宿したのは同じ愛知県の中高年夫婦、そのご主人の前夜の観測です。

礼文岳には過去2回失敗し(天候?)、今回は何が何でも頂上にという意気込みでした。

礼文山頂
(礼文岳山頂。奥の濃い青色は、宗谷海峡の海)

 

彼方のサハリン

その二人は私たちより一足先に山頂で腰をおろし、東に宗谷海峡の大海原を見遥かしながら食事を楽しんでいます。

 

「念願がかなって、よかったですね」

 

声をかけますと、おかげさまで、ほら、あれがサハリンですよ、と稚内(礼文、利尻へのフェリー発着港)の島影の左手はるかにあるおぼろな島影を指し示します。

 

礼文岳は人気の山のようで、20人ほどと出会います。

雰囲気は島外からの観光客です。

 

四囲を海に囲まれ、高山植物の宝庫といわれる礼文島の礼文岳山頂の感覚は、ちょっと異色なのです。

 

若き日の記憶とハマナス

「あら、ハマナスが」

礼文岳ハマナス

食事を済ませた愛知の奥さんが、数メートル先で明るく言います。

 

(ハマナスが?砂地の海岸に生育するのではなかったかしらん?)

 

冷たい西風を避ける岩陰でサンドイッチを頬張りながら私は、何かの勘違いだろうと思います。

若い日に十数年北海道に暮らした体感がそうささやくのです。

 

「あら、これは◯◯じゃぁ・・・ねぇ?」

「おまえ、それなら、うちの庭にだってあるぞ」

 

奥さんにご主人が応じ、どこか掛け合いのようです。

 

遅れて下山し始めた私は、ハマナスのあたりを注意しますと、驚いたことに、私の理解の限りでハマナスです。

 

ピンクの花は終わり、実はかなりの赤色、これから真っ赤に熟していくことでしょう。

海岸も490mの山頂も、この島では北方系の植物が育つのだと感服します。

礼文岳下山路
(礼文岳の登山路を下る若い男女四人)

 

帰郷したのちも、あれはハマナスだったのかと、夢に迷うような思いが残るのでした。

 

次の余話
礼文岳雲割れ・利尻
【登山余話2】利尻岳と二つの海

    山行データ2016年8月28日。63歳。妻と同行。礼文岳登山の二日後。鴛泊登山口(5時間)利尻岳(4時間)鴛泊登山口。台風10号の接近が気がかりになっている。   ...

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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