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南アルプス 登山記録 第9章[蝙蝠岳-赤石岳縦走]

【第9章】蝙蝠岳から塩見岳、悪沢岳、赤石岳縦走①~蝙蝠のつばさ~

 

前回の記事
北岳
【第8章】北岳から大井川源流、農鳥岳⑦~農鳥岳から奈良田へ大下り~

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山行データ

1999年7月16日-21日、46歳。単独。
浜松から車で大井川を北上し畑薙第一ダムが入山口。さらに上流の二軒小屋から蝙蝠尾根に取り付く。
バカ尾根に出て塩見岳(3,052)、悪沢岳(3,141)、赤石岳(3,120)を踏んで椹島へ下山。

 

大井川の奥深くから南アルプスへ

コロナウイルスに入山制限を受けて二度目の2021年からさかのぼって22年前の南アルプスに戻ります。

 

このブログは日本海・親不知海岸と太平洋・田子ノ浦海岸をつなぐ全3,000m峰を歩いた山旅の顛末記です。

 

このルートは当初から計画した山旅ではありません。

1年に何度か山歩きを続けてきて、あるとき、あぁこの調子なら二つの海の間にそびえる3,000m峰を歩きつなげそうだ、と思い立った次第です。

 

(あるとき)と気持ちが動いたのが、今回の山旅あたりからです。

 

前章で初めて南アルプス(北岳~間ノ岳~農鳥岳)を歩いてすぐ、わたしは東京から浜松に転勤しました。

 

偶然ですが、わたしを南ア静岡県側の入山口に差し向けたわけです。

わたしは百名山ハンターではなく、住居のある当地から最寄りの山岳を歩く流儀です。

こうもり地図
(蝙蝠岳と周囲の3,000m峰)

 

ですから、北海道苫小牧にいた頃は日高山脈北陸にいた頃は北アルプス白山が主な訪問地です。

一口に白山といっても御前ヶ峰(2,702m)を主峰に、すでに紹介した笈ヶ岳や宗教登山のルートだった加賀禅定道など探訪先は多かったのです。

その伝で、浜松にいれば南アルプス!となるわけです。

 

蝙蝠岳が面白そう!!

時間の流れでいえば蝙蝠岳ルートは3回目の南アです。

直前に、まず3,000m峰の聖岳、赤石岳を踏んでいます。

 

南ア初心者ですから、特徴とされる静かな、深々とした南アの森林と自然はどこ?という発想が浮かびました。

 

要所に山小屋、避難小屋があるルートというのは、多くの人たちが歩いている証拠です。

そうした主稜線から少し逸れるだけで、山々は信じられないほど密やかです。

 

例を挙げれば北ア屈指の人気もの燕岳の北に続く北燕岳から餓鬼岳

蝙蝠岳は山岳地図には記載され、静岡県の山岳ガイドブックにも載っています。

 

けれども主稜線からずれた位置なので人々の関心は薄いに違いない。

蝙蝠岳
(蝙蝠岳は手前の尾根の中央、右は塩見岳。奥は赤石岳方面=広河内岳から。2021年)

 

そこがいい。

名前も個性的。

 

文字通り、ピークを頂点にコウモリが羽(腕?)を広げたような山容なのだと。

 

一人のテント旅。

食糧持参。

6日間の計画。

 

リュックは相当な重さになります。

 

なまった体にむちをくれる

体力が問題です。

体力に何の不安もなかった学生時代の山旅とは全く違います。

40歳代後半、れっきとした中高年です。

 

けれどその不安は、浜松暮らしの1年で劇的に解消されています。

浜松で突発的にジョギングを習慣づけ、体を鍛え直しているからです。

 

山歩きの体力作りを意図したわけではありませんが、不健康な中高年の食生活と運動不足によって、脂肪を厚くまとったブロイラーになってかっこ悪すぎましたから。

 

余分な脂肪は落ち、体重は学生時代と同じくらいです。

これは気力の強化にもなります。

 

一人で一日中、無人の山中を歩く楽しみは、そうした体力と気力の裏付けがあればこそついてきます。

 

入山は大井川奥地の畑薙第一ダムサイトまで車で。

河口からは60㎞くらいあります。

 

林道バス
(畑薙第一ダムから奥は送迎バスになる)

 

商業バス会社の運行も、ここが終点。

その奥地は林道にのって、この広大な山域を私有する東海パルプ(当時)の送迎バスです。

聖岳赤石岳などへは送迎バスを利用するか、林道をテクテクと歩くかのどちらかです。

 

私有地の国立公園とバス便

「送迎バス」と書くのは次の事情からです。

この山域のたいていの山小屋が東海パルプの運営。

 

一般の路線バス便はバス会社の運行です。

客を乗せて料金をもらう商行為ですから、安全面などについて法律に基づく許認可が適応されます。

 

けれど、畑薙第一ダムからの送迎バスは旅館やホテルが宿泊客を送迎するのと同じです。

料金をとると、いわゆる白バス(違法行為)です。

 

旅館は一泊なりの利用料金を請求しますが、送迎バス料金はとりません。

全体料金の中でのサービスです。

これを応用し、山小屋利用を前提として送迎バスで登山者を乗せます。

 

山小屋代金の一部(1000円)を先取り・領収書発行し、登山者は山小屋での精算時に領収書を見せて差額を払うわけです。

 

この仕組みを利用し、山小屋を利用しないテント縦走派が入山することも可能でしょう。

南アルプス国立公園の特徴は、公園の多くが私企業の所有地であることです。

送迎バスはその端的な例です。

 

ともあれ、マイクロバスに乗って椹島(赤石岳登山口)からさらに奥の二軒小屋が終点。

ここに立派なロッジがあり、食事付きの宿泊ができます。

しかし、わたしは明るい日差しの中を大井川沿いの林道を先に歩きます。

 

質素な郵便受けのようなポストが道のそばに。

入山届を収める箱です。

しわになった古びた一枚が入っているだけです。

 

見上げる森林のはるか奥にあるはずの、蝙蝠岳のたたずまいを見る思いです。

 

 

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日没
【第9章】蝙蝠岳から塩見岳、悪沢岳、赤石岳縦走②~クマがいる~

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは8年目(2023年4月現在)

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