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【登山余話7】新型コロナ猛威の夏、蝶ヶ岳から霧ヶ峰へ③

 

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【登山余話7】新型コロナ猛威の夏、蝶ヶ岳から霧ヶ峰へ②

  山行データ2020年8月10~11日。67歳。妻と。名古屋(クルマ)沢渡(シャトルバス)上高地(歩き)徳沢ロッジ二泊。下山後松本一泊、13、14日と美ヶ原~霧ヶ峰散策、霧ヶ峰二泊。 &n ...

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山行データ

2020年8月10~11日。67歳。妻と。名古屋(クルマ)沢渡(シャトルバス)上高地(歩き)徳沢ロッジ二泊。下山後松本一泊、13、14日と美ヶ原~霧ヶ峰散策、霧ヶ峰二泊。

 

かつての牧場を抜けて

穂高の岩壁や穂高前衛の山嶺の狭い底を刻む梓川沿いに、珍しく開けたところが徳沢

槍穂高へ向かうのにも下るのにも、ここに来るたびに心身がスッと伸びやかになります。

この広がりはかつて徳沢牧場だったというのです。

徳沢牧場
(百瀬藤雄ガラス乾板写真集『北アルプス万華鏡』・郷土出版社より「徳沢牧場」)

今では牛馬の群れは地誌や写真に探訪するばかり、目の前には赤・黄・緑・青などのテントがギュウギュウに群れています。

テントの張り綱が本体から四方に放たれていますので、足で引っかけないよう注意しながら横切ります。

いい香り。

コーヒーがどこかのテントからもれて、高原のキャンプ地らしい。

風がざわついていますが、空は明るく青い。

蝶ヶ岳の尾根からの展望を期待し、キャンプ場の端から始まる登山道に取り付きます。

登山口
(蝶ヶ岳への登山道はここから)

登り一辺倒、樹林帯の登山道という触れ込みですので、そのつもりで見上げます。

 

キノコが色彩豊かに

朝食替わりの弁当をリュックに入れています。

このルートを利用する登山者は少ないようで、中年夫婦に追い越されたほかは、登る人はとんとなく、たまに下山する人と出会うくらいです。

登り

濃い森林が発するエキスを存分に吸い取りながら、夕べは幼児の夜泣きが続いたなぁなどと、宿の出来事などを話題にしながら登ります。

楽しみな弁当はおにぎりなど。休憩しつつ、少しずつ腹に送り込みます。

背後になる樹間のすぐ先に立ちはだかる前穂高岳の尾根の上部には雲がかかっていて、風がドドゥドドゥと木々を揺すります。

単調といえば単調ですが、足下にはお化粧をしたような色合いでキノコが現れます。

きのこ
(何という名のキノコなのだろう・・・)

食用、毒ありの区別はごく少ししかできませんが、猛毒で知られるベニテングダケくらいはわかります。

「これ、ベニテングダケ、猛毒ですよね」

真っ赤な傘がいかにも毒々しく見えるキノコを写真に撮り(白山・銚子ヶ峰)、その方面に目がない知人に鑑定してもらうと、

「タマゴダケ。食べられるよ、これ」

とのこと。

一つ賢くなりつつ、惜しいことをしたものだと思ったものです。

今はベニテングダケとおぼしき写真を撮っていると、下山する高年カップルもキノコに誘われ、

「これ、何ですか。食用?」
「たぶん、ベニテングダケ。猛毒、食べたらイチコロですよ」
「こんな綺麗なあかい色なのにねぇ」

という会話です。

 

妖精の池、荒れる尾根

展望の乏しい森林の中で、大小の池塘が尾根のくぼみに水をためています。

尾根近くの大きなのには「妖精の池」と名があり、密やかな水面を樹林が囲んでいます。いつ、そういう名がついたのでしょう。

尾根が近い。木々が低くなり、風圧を受けるようになり、ハイマツが目につくようになりました。

視界が開け槍穂高の大観があるだろうか、思いはその一点です。

尾根に出ます。地肌が出ています。

大観はありません。残念。

冷涼な西風が猛烈です。

尾根の東側の窪みにある数張りのテントは、風圧を受けて潰れそうに変形しています。

支柱が苦悶のきしみ声を上げてでもいるようです。

テント
(テント場は閑散。風圧にテントが潰れそう)

ガスが横殴りに疾走します。

体温がぐんぐん奪われるのが分かります。

二十人ほどの登山者が山小屋を風除けに、安曇野側のベンチ周辺に集まって、熱いカップ麺(山小屋で買える)をすする人もいます。

 

槍穂高の大観まで、100m

わたしたちはお湯をわかしてカップ麺です。

槍穂高の全景を堪能しながらすするラーメン、その後のコーヒーこそ、最高のご馳走なのですが、荒れた天気ではどうしようもありません。

それでも、冷える体に最後のスープのひとしずくまで飲み干すラーメンは極上の一品、鼻水がツツゥと出ます。

ときどき安曇野側のガスが切れると、人里が見えて歓声がわきます。

風除け
(寒さをしのいで休む)

「ここまできて、人里を見たって仕方がないわよ」

身も蓋もない声も聞こえますが、大観への期待が大きいからこその正直な感想です。

下山。小屋から離れ尾根に出ると、風圧で体がぐらり。

槍穂高に目をやれば、あと100メートル。

稜線にかかるガスが切れれば、大観を手にできます。

槍ヶ岳の穂先の根元あたりまで見える瞬間があるのですから。

それにしても寒い、いや冷たい。

防寒具を着て手には軍手をしているのですが、氷水に手を入れたように指先がかじかんでいます。

夏山を侮れません。

下山ルートである横尾への分岐まで、岩とザラ地の尾根をふらふらしながらたどります。

ガス尾根
(蝶ヶ岳の尾根を北に進む。横尾への下山路方面)

蝶ヶ岳という優雅な名とは裏腹な冷厳な尾根です。

妻は元気に写真を撮りまくっていて、大観にそっぽを向かれたことをさして残念がっていないのが、わたしとしては救いです。

いずれ、再訪するか・・・。

それが、この景観。

槍穂高
(右端が槍ヶ岳と北鎌尾根、中央の凹みが大キレット、その左へ北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳)

 

(続く)

 

 

 

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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