北アルプス 登山

第6章 唐松岳から白馬岳、日本海へ①~五輪連想~

山行データ

2002年8月8日ー12日。49歳。単独。3千m峰はないが、日本海~3千m峰全山~太平洋という旅に欠かすことはできない。栂海新道を北上する

 

新宿発、30年ぶりの唐松岳へ

北穂高岳の山頂直下のテント場で遭難寸前の中高年二人をテントに収容してから一週間後。

気を取り直して再び北アルプスを目指します。

これで夏休み休暇を使いきります。合わせて二週間ほどの貴重な休暇です。

二ヶ月近い夏休みがあった学生時代の、なんという伸びやかさ、なんという無駄、なんという無為、なんという贅沢。

そんなことを千々に思うのも、この山旅の始めが唐松岳(2,926m)だから。

大学2年夏、立山、槍ヶ岳を経て上高地へ抜ける初の北アルプス縦走の初日のテントをその山頂直下に張ったのです。

唐松岳から北へ伸びる尾根を指先で地図にたどれば、白馬岳(2,932m)雪倉岳(2,611m)朝日岳(2,418m)を踏んで、山塊は緩やかに日本海へ沈んでいきます。

初めて歩く、長そうな道のりです。

白馬岳は登山者が長々と縦列する大雪渓で余りに有名ですが、わたしは初。

白馬三山
(白馬駅の外に出ると、白馬の連山が真正に迎える)

 

マックが白馬駅前にやってきた

8月7日の午前零時近く新宿を発ち、安曇野に入って鈍色の夜明けの空を眺め、白馬駅で下車したときは明るい大気に満ちています。

東京の密集と混沌は微塵もありません。

登山者が吐き出されます。

駅の真正面に白馬の連山が真横に立ち塞がっています。

目の前の交差点の角にはマクドナルドのピエロの看板の派手なこと。

駅前の一等地。30年の時間の流れが象徴的です。

わたしが学生のころ日本第一号店が開店したマックは、繁殖力旺盛なオオバコが登山道をどんどん高いところへと広がっていくように、日本中にあります。

私の今日の行動食は東京で用意したマックなのですから、苦笑ものです。

 

 

長野五輪と札幌五輪の歓喜

リフト、ゴンドラなどを乗り継いで八方尾根のゲレンデを眼下に流して最終駅を降りると1998年の長野五輪(冬季)の会場です。

日本の男子ジャンプチームが劇的かつ感動的な優勝をもぎ取ったのは、吹雪の白馬でした。

冬季五輪となると学生時代の1972年、新聞の1面を思い出します。

「日の丸飛行隊」という大見出しです。

札幌五輪ジャンプの笠谷選手らが金銀銅を独占したのです。

今歩き始める八方尾根では、長野五輪男子滑降レースのスタート地点が随分と議論になりました。

国立公園の自然保護と、レースが求める距離の確保との調整です。

 

白馬駅前
(白馬駅前で登山前の支度をする人々。アイゼンの貸し出しの案内が、大雪渓の白馬岳らしい)

 

 

山の自然に依存する大都市

人が自然に指一本触れてはならないというのでは、人の暮らしが成り立ちませんから、そういう極端な立場を自然保護とは言えません。

原初の自然や生態系を維持する地域を核心的に守ることは重要です。

人の勝手や欲望ばかりをかなえるのも問題ですから。

地表をコンクリートやアスファルトで覆い尽くし人工の限りを尽くす近代都市、たとえばわたしが職場とする東京は自然と人との距離感を修正する必要があるように思います。

都心部が夏に極端に暑くなるヒートアイランド現象などということが起きています。

自ら賄えないものですから、大都市は遠くの山間部に巨大なダムをいくつも開発し水を引いているのです。

思うに、多数のダム建設は自然を持続的に利用する山の民の知恵や民俗を、どれほど破壊したことでしょう。

どれほど多くの人たちが山を追われたことでしょう。

薬師岳から眼下にした有峰湖などを思い浮かべます。

こうした雑感をこねまわし、軽装の人々の気配を背に捨てつつ仰げば薄く冷ややかなガスが切れ、明るい青空に涼しげな白雲が流れています。

東京の空、東京の雲には決してないキリリとしたたたずまいです。

 

 

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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