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【登山余話16】南アルプス小太郎山、広河内岳~脇役の夏㊥~
山行データ 2021年8月26日―9月1日、68歳。単独テント。 名古屋から山梨県奈良田で駐車。広河原から入山。 北岳、間ノ岳、農鳥岳の3000m峰をたどり、北岳の北にある小太郎山(27 ...
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山行データ
2021年8月26日―9月1日、68歳。単独テント。
名古屋から山梨県奈良田で駐車。広河原から入山。
北岳、間ノ岳、農鳥岳の3000m峰をたどり、北岳の北にある小太郎山(2725m)、農鳥岳の南にある広河内岳(2895m)を訪ねる。大門沢から奈良田へ下山。
北岳とキタダケソウ保護
月曜日の北岳のテントサイトの朝は疲れたように静かです。
肌を這うガスのつめたいこと。
急な登りから北岳の山頂に着くと、中年男女2人連れと銀髪の高年男性1人がいるきりです。
登りでは数人とすれ違っただけ。
平日の北岳は気が休まります。
(北岳山頂のお地蔵さん。頭に賽銭をのせて手を合わせた)
今日は農鳥小屋のテント場までなので、いつもにもましてのんびりです。
(農鳥小屋のテント場から往復25分ほどの水場。冷たくて豊富。美味)
百名山達成は北海道の幌尻岳を残すだけと会話している銀髪男性に、自分の幌尻岳の経験(暴風雨)などを情報提供したあと北岳を南下します。
こんなにも急だったのかと、25年前の薄い記憶に上書きします。
ザラ場にジグザグ。
白っぽい丸木が道筋からずれているさまは、北アルプス南岳~北穂高岳の大キレットに取り付いたときの険しさと同じくらいです。
下りきった鞍部にある北岳山荘はコロナウィルス対策で休業。
維持要員の女性が登山道の標識を補強する作業をしています。
少し手前の左手の遠目にロープ(?)で四角に仕切られた二つの区域があったので聞くと、キタダケソウの生育地。
狭いものです。
北岳の看板娘であるその高山植物は、夏山を前に咲き終えています。
梅雨に残雪を踏んで開花を目にする山歩きもおいにそそられます。
ライチョウは減少?そそられる三峰岳
他の男性登山者と女性との会話から、この地域のライチョウは中白根山付近あたりだけになっているとか。
7月の中央アルプス駒ヶ岳ではライチョウ復活が進む現地を見ましたが、南アルプスでもライチョウは確実に減っています。
ライチョウに出会うことなく広場のような間ノ岳に着きます。
時間が許せば、間ノ岳から北への尾根を歩き三峰岳を訪ねたい。
小太郎山、広河内岳のほかの、ルートからはみ出す地味な山です。
過去2回通過している三峰岳ですが、この機会に敬意を表したいと。
間ノ岳へ登っているときに右手に見えた三峰岳は、右肩下がりの尾根の先に拳を握ったようにして膨らんでいました。
(間ノ岳の右端に三峰岳がこぶのように)
それなりの存在感です。
その頂から仙丈ヶ岳へとバカ尾根が長くだらりとたわむ。
長いなぁ。
間ノ岳から往復しても、農鳥小屋のテント場には余裕で着くと算数したのですが甘かった。
午前5時には北岳のテント場を出ておくべきでした。
あまりにのろい歩みだし休憩が長いので。
試しに軽身になって少し尾根を下ってみたのですが、時計と相談してすぐに断念。
(間ノ岳山頂付近の標識。午後のガスがわく)
それでも、大井川の蛇行が銀色にギラリと照るのを目にできたのは、嬉しい収穫でした。
登山道を駆ける!?トレイルラン
(広河原)北岳~間ノ岳~農鳥岳(奈良田)は一般向けですが、特に間ノ岳から農鳥岳方面の人影はまばらです。
出会う登山者は印象に残ります。
まして、ほとんど空身、半ズボン、Tシャツ、登山靴とは違う靴を履き、早足の人たちには信じられない思いです。
間ノ岳農への途中で抜かれた二人には、間ノ岳近くですれ違いました。
北岳~間ノ岳を往復なのです。
20歳代、50歳代くらいの男性2人。
最少の持ち物(水分、間食)を小さなリュック(肩からたすき掛け)にし、飛ぶが如く。
昨日小太郎山付近で出会った男性(53歳)もその流儀の一人か。
大門沢から入山。
大井川源流を横断し熊ノ平でテント泊。
翌日(昨日)は午前3時に出て間ノ岳、北岳、小太郎山を経て広河原におりる足を伸ばして小太郎山往復です。
「(余裕を持たせて)もう一日と思ったのだが、上司に休みを取らせてもらえなかった」
勤め人の性ですね。
フルマラソン、トライアスロンも何回もこなして体力を鍛えているそうです。
こうした軽装、速歩の山岳踏破は、トレイル・ランというそうです。
白根三山は随分と人気だと、大門沢の小屋で後に聞きました。
(広河内岳が近い。右手に盛り上がる山頂が塩見岳)
山は静かに、広河内岳
大門沢下降点。
下山の分岐点です。
重いリュックを置き広河内岳へ往復です。
左手には朝からずっと富士山を伴います。
ハイマツが散在する小さなピークを3つ、4つ越えるたびに高度をあげて、ゆっくりと40分もかければ広河内岳の頂です。
岩が重なったこじんまりとしたピークが用意してくれた南部の景観が新鮮です。
(広河内岳から農鳥岳方面を振り返る)
地肌を見せる左手の尾根には登山道が明確に刻まれていて、ずっと伸びていきます。
地図によると笹山(黒河内岳)の頂から奈良田へと登山道があります。
未知。
ようし、次はここを歩こう。
(広河内岳から南への尾根に縦走路が見える。雲海を抜けて富士山)
山頂手前右下には、ちょっと広い台地があります。
赤石岳の南にある百間平のミニ版を連想します。
(広河内岳山頂近くの台地。踊り舞台のよう)
北アルプスと対比される南アルプスですが、五色ヶ原、雲ノ平のような広大な高山の平原とは出会いません。
いつか眼下の台地で憩い、足跡を刻んだ蝙蝠岳、塩見岳、悪沢岳や赤石岳をしみじみと向かい合ってみたくなります。
わたし一人きりの広河内岳。
ひと手間かけてきてよかった手応えがあります。
(この項、終わり)
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