登山 白山

白山2019年夏~夫婦のテント旅(上)~

 

山行データ

66歳。2019年8月1~3日。砂防新道経由、南竜ヶ馬場でテント2泊。山頂巡りなど。3日に下山後は滑川で友人夫妻と会食。翌日は剣岳登山口の富山県馬場島山荘で宿泊後名古屋に戻る。

 

 

北薬師岳でアメリカの大学生とsmall talk

北アルプスの薬師岳を指呼の間に仰ぐ北薬師岳で一息入れていると、五色ヶで知り合ったアメリカの大学生男性2人が笑顔に汗をキラキラさせてグイグイ登ってきてそばにリュックを下します。

昨夜は森林限界直下のスゴ乗越で、私たち夫婦はテント、2人は小屋泊まり。うち1人が五色ヶ原からの灼熱にやられて熱中症にかかったのですが、治療静養して回復したのでした。

約30日間の休暇で日本に来て、伊豆諸島へ渡る前に室堂~薬師岳を歩いているという。

「トランプ大統領にうんざりして日本に脱出したということですね」

と冗談をいうと笑います。共和党支持か民主党支持かは言いませんでしたし、政治のはなしをここまで来て展開するのも野暮を承知なのでしょう。

有峰湖
(有峰湖を足下に北薬師岳を目指す)

足下の有峰湖がかつての集落を湖底に沈めていることなどを雑談していると、遠く西に広く裾を広げた白っぽい山が、輪郭のはっきりしない平たい雲を山頂にかけているのが見てとれます。

「あれを見て。あれは白山、あなたたちが歩いた立山とともに日本で最も重要な信仰登山の山です」

と英語で説明したのですが、あまりピンと来ないようでした。

薬師岳から折立へ下山するまで残り二日ですが、日本の山岳を歴史の一端に触れ、楽しんでもらいたい思いです。

 

 

思いは白山のお花畑へ

“What is that?”

と一人が薬師岳山頂に四角いコンテナのように見えるものを指さします。

“It’s a shrine dedicated by the people of Arimine local small community in the past:many many years ago , It is now under the lake you are overlooking from here.”

と答えます。

“Why did they live there?”(なんであそこに?)

と興味が続けば、有峰集落水没とダム建設、薬師信仰など多少の知識を話そうかと思いましたが、

“We have some free days after this trekking before visiting the Izu islands. Do you have any recommendations we could go?”

関心が下山後の予定に移りましたので、JR飯田線を勧め沿線の無人駅など、ビル群ひしめく東京では味わえない日本の地方のくらしぶりを説明したのでした。

立山(室堂)~五色ヶ原(二泊)と歩いてきた私たちのテント旅は5日め。

岩とがれきばかりで、無機質、殺伐な尾根に、妻は恐怖と危険を感じ不満の様子です。

私には三度目の道のり。北薬師岳から薬師岳にかけた一帯が、富山平野から遠目に見やる穏やかな山容とは似ても似つかない悪相であることを承知しています。

「高山植物がすごいっていうからイヤイヤついてきたのにぃ」

妻は間欠泉のように繰り言を繰り返します。

五色ヶ原のお花畑では満足できなかったようなのです。

五色ヶ原
(ハクサンイチゲの群落、残雪の五色ヶ原。奥は浄土山)

遠いかなたにある白山は、高山植物の豊富なことでは国内屈指でしょう。

記憶の中の白山のクロユリやハクサン小桜の群落を想起し、来年は白山だな、と胸の内で算段したのでした。

さきほどアメリカ人学生に教えるうちに白山への思いが急に強くなったのでした。

 

 

白山への道のり

白山の登山道は周辺の山々を含めて多く、金沢などに暮らした北陸時代(40歳前後の数年)にあれこれ訪ねていますが、テント泊となると山頂より少し標高の低い南竜ヶ馬場だけです。

長女が小学5年の夏、別当出合から砂防新道を経て南竜ヶ馬場でテント一泊し、南の別山を経由し、ブナ林が濃厚なチブリ尾根を下るコースを歩きました。

その年、南竜ヶ馬場には残雪が豊富でハクサン小桜が群落をなして淡いピンク色に咲き広がっていたものです。

この時は最高点の御前ヶ峰の山頂は歩いていませんが、今回は二日目に山頂一帯をぐるりと漫遊しながら、花々を楽しむ計画です。

「去年の北薬師はひどかった。本当に怖かった。落ちたらどうしようかと思ってひやひやばかり。だまされたわ」

「めまいがするようなクロユリの大群落がまってるから」

薬師山頂
(薬師岳山頂の祠。中に仏像が安置されている)

 

定期便のように繰り返す妻の繰り言をかわしつつ、午前2時に名古屋を出発し、高速道路から一般道を乗り継いで石川県白山市の市ノ瀬につきます。

朝の7時。人もクルマのほとんどなく閑散としています。

金曜日ですので、明日明後日の週末に混雑があるに違いありません。

 

白峰村から白山市へ

平成の自治体合併で、かつて私が訪れた白峰村は、今は新たに誕生した白山市の一部です。

山の斜面を切り開き、焼き畑耕作で農作物を生産して生きる雪深い地域でしたが、私が金沢に在住したころはすでに、生活を焼き畑に依存する民俗は廃れていました。

しかし白峰という地域名は健在で、白山という自治体名が冠に付き、山岳としての白山の存在感がいっそう増しています。

カタカナの南アルプス市は感心しなかったものですが、白山市は地域ズバリ山岳信仰の歴史に根付いていて好ましく思います。地名が文化の粋であることを疑いません。

ちなみに南アルプス市は北岳を含む白峰三山という呼び方があるので、白峰市(しらみねし・しらねし)などとなっていれば、風土や歴史への敬意や地元の熱量が伝るのではないかと思います。

20年以上の前、金沢在住のころ、「金沢にいるうちに白山登山をしたい」という会社の上司ら二人を夏に、市ノ瀬の先の別当出合から同行したことがあります。

別山
(別山山頂から北に、白山本峰の御前ヶ峰を遠望する(2010年7月)

その時は、下界に当日の用事があって、私だけ日帰りで下山したのですが、今はさすがにそういう芸当はできません。

シャトルバス便の発着地点である市ノ瀬で時刻を確認し、別当出合へと向かいます。

 

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クロユリの大群
白山2019年夏~夫婦のテント旅(中)~

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは5年目(2020年4月現在)

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