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南アルプス 登山記録

【第8章】北岳から大井川源流、農鳥岳④~花園にはわけがある~

 

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農鳥岳
【第8章】北岳から大井川源流、農鳥岳③~北岳の山小屋点描~

    山行データ1997年7月19日~21日、45歳。単独。 新宿から夜行列車で甲府駅下車。 バス便で広河原から入山。北岳から間ノ岳、三峰岳、大井川源流、 農鳥岳から奈良井へ下山 ...

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山行データ

1997年7月19日~21日、45歳。単独。
新宿から夜行列車で甲府駅下車。
バス便で広河原から入山。北岳から間ノ岳、三峰岳、大井川源流、
農鳥岳から奈良井へ下山。北岳肩ノ小屋、農鳥山荘で宿泊。
3,000m峰は北岳(3,193)、
間ノ岳(3,190)、西農鳥岳(3,051)の三座。

 

北岳と対峙する間ノ岳

北岳山頂の喧噪を背に間ノ岳に向かいます。

絵に描いたような馬の背の尾根が蒼天の底にたわんでいます。

 

岩だらけの尾根道の一番低いところに、北岳山荘の赤い屋根がポツンと鮮やかです。

 

北岳山頂では広河原方向へ向かう男性二人づれが気にかかりました。

背中を隠す大きなキスリングと寡黙な足取りは、テント派に違いない。

縦走者

大気が涼やかな早朝です。

北岳山荘のテント場か、さらに間ノ岳の先にある農鳥小屋のテント場を暗い内に出たのでしょう。

 


(北岳山頂から仙丈ヶ岳)

 

夏の縦走のお手本です。

本来はテント派のわたしは、おおいに刺激されます。

 

ちなみに、新型コロナ2年目(2021年)の夏山は、北岳山荘のテント泊も予約制です。

 

昨年夏に北アルプス・表銀座~黒部のテント縦走の初日、燕岳燕山荘のテントはネットで予約し1,000円だったと記憶します。

今年は2,000円。2倍の値上げ。

 

燕山荘に次ぐヒュッテ西岳槍ヶ岳山荘のテント利用も、この夏は2,000円。

 

一方で北岳山荘は1,000円。

 

テント場やトイレ清掃、ゴミ処理など環境対策に、テント利用料金は活用されているのでしょうが、(テントが2,000円の時代かぁ・・・)というのが、正直な感想です。(料金はそれぞれの山小屋のネット情報)

 

この夏は北岳山荘のテント場を根城にしようか・・・と妄想と想像の間をゆらめきます。

 

北岳でサルを見るわけ?

さて、鞍部に下りかけるとすぐに、左手の岩がごろごろする斜面を頂上方向に移動する小さな動物に気がつきます。

前屈みに、長い腕を交互に出してオサルさんが一匹。

 

若そうです。

 

集団で行動する習性のはずですが、単独行動?

はぐれ?仲間はずれ?独立志向?

北岳山荘
(中央赤い屋根が北岳山荘)

ここ数年、北アルプス入山でクルマを利用するにつけても、アスファルトの車道に座っていたり道路傍ら木々の枝を渡ったりするのが当たり前なっていますが、1997年の北岳山頂直下での目撃にはドキリです。

 

(3,000メートル級の高山にまで進出するわけ?)

 

生き延びる逞しさより、脅威に近い。

東京などの大都市にもサルが出没する時勢には自然のねじれを感じます。

 

北岳からこちらは、めっきり人が少ない。

静けさを傍らに、散策や逍遙の気分です。

 

北岳山荘には寄りませんが、建物からにじみ出る雰囲気はいたって素朴、質素で、昨夜にしても喧噪を極めはしなかったことでしょう。

 

山小屋は少し立地がちがうだけで、驚くばかりに質朴な憩いの場になります。

 

そうした山小屋をつと思い出せば、北アルプス上高地近辺だと徳本峠小屋白馬三山だと唐松岳の北にある天狗平小屋など。

いい味を醸し出しています。

 

このブログで紹介した中央アルプス木曽駒ヶ岳木曽福島側にある避難小屋も欠かせません(第二章~中央アルプスを越える③~避難小屋について~)。

白山のあちこちで利用した無人の避難小屋も好感します。

白山山小屋
(白山美濃禅定道にある避難小屋で一泊。左の残雪で缶ビールをギンギンに冷やす=2010年7月26日=別山への途上から)

 

屈指の高山植物の博覧会の尾根

偶然なのでしょうが、北岳~間ノ岳の距離は北アルプス大キレットとほぼ同じ、ざっと3キロメートル。

 

容貌はまったく違い、足下は安定した土と岩の尾根。

 

大キレットは巨大な鉞のような岩の刃がボロボロに欠け、乱れに乱れる悪相です。

 

太陽が昇るのにつれて空気が暖かくなり、尾根を白いガスがかすめるようになりますが、大きく天候が悪化する心配はありません。

 

砂地や岩の割れ目に根を食い込ませて、今を盛りに開花する高山植物を目の保養にしながら、ゆっくりとしたものです。

紫の花_

花咲く

足下のコースと高山植物について、この山行の翌年に出た『山の自然学』(小泉武栄著・岩波新書)が科学の目から教えてくれます。

地質と育つ高山植物の関係などをといたうえで。

 

「中白根のちょっと先に素晴らしいお花畑があらわれる。ミヤマオダマキヤやシオガマ類をはじめとするみごとな風衝草原である。草原の花を見るにはまたとないところだ」

 

下山後の啓蒙が実感を呼び起こし、手に取る記述の行間に新しい縦走を楽しみます。

 

三峰岳から大井川源流を見てやろう

間ノ岳の広く平らな頂に着きます。11時前。

 

山小屋発は6時。朝食は取らず(1,000円返金、ゆで卵1個もらう)、ジュース(300円)をリュックに入れました。

 

間ノ岳山頂では、インスタントラーメンに餅を二切れ入れて昼食。

小雪渓の雪をコップにすくい、ウィスキーをたらして気付け代わりののど越しに。

 

せめてこれくらいの自炊は楽しみたいので。

しきりに青い炎を吹き出すガスコンロ、その熱を受けて小さい泡をたててお湯がわきます。

頂
(間ノ岳途中の小ピーク=中白根山?)

あちこちが黒ずむ丸型・銀色コッヘルは、学生時代からの付き合いです。

月面並にぼこぼこですが、長い付き合いは今(2021年)も続きます。

ラーメンをすすりながら、ちょっと考えが浮かびます。

農鳥小屋に直行するには午後が長すぎる。

地図

地図を見ると、西の三峰岳(2999m)へ尾根伝いに寄ってから、大井川源流地帯を戻ってくることが、十分に可能です。

 

江戸時代に架橋を禁じられ、東海道往来の要衝として名をはせた駿河国の大井川

 

名のある川の始まり、最初の一滴。そこへの来訪。

 

決めた。震えるほど楽しみが膨らみます。

 

(続く)

 

 

 

 

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ゴン

1952年生まれ。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは8年目(2023年4月現在)

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