山行データ
炎夏脱出
(礼文岳への登り口付近。ブッシュにZ形に登山道が刻まれていく)
洪水のようなリオ五輪ニュースが去っても、名古屋の炎夏は続きます。
脱出。
どうせなら日本で一番北の離島で避暑をと、礼文島、利尻島に出かけます。
(礼文島には山はあるかしらん。あれば登ってやろう)
調べると、礼文岳(490m)が最高峰。
麓から往復4時間ほど、手ごろです。
礼文島に来ますと期待以上に涼しい。
ところどころの船溜まりに小型漁船が浮かびますが、稲穂のたわむ水田も、季節の野菜が茂る畑も目に入りません。
台地が波打ち際まで迫り、人家が一列に並びます。
(奥が礼文岳。山頂付近はハイマツが低く生い茂る)
礼文岳前夜
礼文岳への登山道は、ダケカンバや針葉樹、ナナカマド、ササなど、北アルプス登山などでなじみの草木の間を縫います。
海岸の登山口から正味490mの標高差。
海と山頂がつながる歩きには、何にも代えがたい手ごたえがあります。
前夜はひどい風雨でしたが、青空が満ちてきます。
妻と、どちらが晴男、晴女かと自慢しあって快調です。
「サハリンが山頂からは見えるんじゃないかと期待してるんです」
民宿で同宿したのは同じ愛知県の中高年夫婦、そのご主人の前夜の観測です。
礼文岳には過去2回失敗し(天候?)、今回は何が何でも頂上にという意気込みでした。
(礼文岳山頂。奥の濃い青色は、宗谷海峡の海)
彼方のサハリン
その二人は私たちより一足先に山頂で腰をおろし、東に宗谷海峡の大海原を見遥かしながら食事を楽しんでいます。
「念願がかなって、よかったですね」
声をかけますと、おかげさまで、ほら、あれがサハリンですよ、と稚内(礼文、利尻へのフェリー発着港)の島影の左手はるかにあるおぼろな島影を指し示します。
礼文岳は人気の山のようで、20人ほどと出会います。
雰囲気は島外からの観光客です。
四囲を海に囲まれ、高山植物の宝庫といわれる礼文島の礼文岳山頂の感覚は、ちょっと異色なのです。
若き日の記憶とハマナス
「あら、ハマナスが」
食事を済ませた愛知の奥さんが、数メートル先で明るく言います。
(ハマナスが?砂地の海岸に生育するのではなかったかしらん?)
冷たい西風を避ける岩陰でサンドイッチを頬張りながら私は、何かの勘違いだろうと思います。
若い日に十数年北海道に暮らした体感がそうささやくのです。
「あら、これは◯◯じゃぁ・・・ねぇ?」
「おまえ、それなら、うちの庭にだってあるぞ」
奥さんにご主人が応じ、どこか掛け合いのようです。
遅れて下山し始めた私は、ハマナスのあたりを注意しますと、驚いたことに、私の理解の限りでハマナスです。
ピンクの花は終わり、実はかなりの赤色、これから真っ赤に熟していくことでしょう。
海岸も490mの山頂も、この島では北方系の植物が育つのだと感服します。
(礼文岳の登山路を下る若い男女四人)
帰郷したのちも、あれはハマナスだったのかと、
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【登山余話2】利尻岳と二つの海
山行データ2016年8月28日。63歳。妻と同行。礼文岳登山の二日後。鴛泊登山口(5時間)利尻岳(4時間)鴛泊登山口。台風10号の接近が気がかりになっている。 青に浮き立つ ...
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