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【山の本棚10】深田久弥『日本百名山』と登山熱㊤

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【山の本棚9】ウェストン『日本アルプスと登山と探検』と2冊の紀行

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2020年9月の中央アルプス空木岳(2864m)は、わたしには百名山40座目のピークでした。『日本百名山』の完登を目指す愛好家は、ひきもきらないようです。

 

空木岳の印象

初めての空木岳(余話参照)は、「深田百名山」行脚のためではありません。

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気がかりな山、まだ行ったことのない山、惹かれる山、そうした思いが高じて訪ねる一座でした。

空木岳が百名山に連なるとは、後付けで確認しました。


(木曽駒ヶ岳から空木岳、越百山方面を遠望する=左から。御嶽山・三笠山から)

 

百名山はしばしば雑誌などで特集され、よく手に取られるといいます。

手元の雑誌『山と渓谷』では、「深田久弥の世界」(2003年1月号)「深田久弥と『日本百名山』」(2021年1月号)があります。

 

その他にも百名山をテーマにした写真集、ビデオ商品、テレビの一座ごとの登山番組などがあります。

本棚に置く『日本百名山』(新潮文庫)は十刷(1982年)です。

 

このころ北海道苫小牧市に在住し、ほど近い日高山脈を歩き始めました。

 

まず静内山岳会主催の、初夏の一般向けペテガリ岳登山大会(二日間)に参加。

初日の自己紹介で女性が百名山完登を目指していると述べて、その存在を知り文庫本を手にしたわけです。

 

北から南から、百名山は広く収集してあり、これらを登りきるには時間も費用もさぞ大変でしょう。

空木岳の記述をみれば、わたしと反対のコースで深田は山頂を過ぎています。


(越百小屋から仙涯峰、南駒ヶ岳方面。空木岳はその奥に見えない)

 

 

百名山から外れる3000m峰

大きな山岳自然を歩き重ねるにつれ、自分だけの物語がおのずと紡がれていきます。

 

その点で、『日本百名山』はガイドブックになります。

数多い山岳のうちのたった100座選定の物差しに標高の高さがありますので、特別感がある3000m峰という視点をあてると気づくことがあります。

 

▼北アルプス=涸沢岳(3110m)、北穂高岳(3106m)、大喰岳(3101m)、前穂高岳(3090m)、中岳(3084m)、南岳(3033m)

▼南アルプス=荒川中岳(3084m)

 

富士山を含め、3000m峰は日本で21座。

そのうち上記の7座は百名山に入っていないのです。

 

喰岳、中岳、南岳は独立峰となっていますが、槍ヶ岳から大キレットまでの尾根にあり通過するばかりの頂なのです。


(前穂高岳から吊尾根をへて奥穂高岳。その左は乗鞍岳=御嶽山・三笠山から)

 

(その頂きに立ってみたい)と引きつける華に乏しい。

 

涸沢岳、北穂高岳、前穂高岳は、涸沢カールを取り巻く穂高連山の峰々で、その最高峰に日本3位の奥穂高岳(3190m)があります。

 

北穂高岳など険悪な滝谷を北にそぎ落としていて、書く材料には困らないと思うのですが外れています。

 

前穂高岳も、小説『氷壁』の舞台となった岩壁や奥又白池など人くさい要素、書く素材が詰まっています。

 

しかし連続する峰々なので、一座に集約させたのでしょう。


(乗鞍岳西方の尾根、南の阿多野郷への岐路から。御嶽山が遠い)

 

 

「百名山」をずらすアングル

私的な100座ですので、読者がそれをあがめる必要はないのです。

 

わたしが『日本百名山』で最も参考にしたのは、後書きで深田の出身地の石川県白山笈ヶ岳、となりの大笠山を外す無念さを記していること。

 

大笠山については、金沢在住のころ登山道のある初夏にブナ林を抜けて到達。

 

 

問題は笈ヶ岳

登山道がない。

 

 

そこでブッシュが残雪に埋もれて歩きやすい4月末、雪の上にテントをはり、一泊二日で念願を果たしました。

 

危険な圧雪斜面通過、ルート探しなどに神経を使った単独行は今も強烈な思い出です。


(残雪を利用し笈ヶ岳へ)

 

とはいえ、百名山を目標・糧とする多くの人たちがいることも事実です。

 

10年前の夏。

 

黒部五郎岳山頂で耳にした会話では、残る最後の一座を薬師岳で締めくくるという方がいましたし、大キレットを振り返る北穂高岳小屋のテラスで一緒になったご婦人、カールを見上げる黒部五郎小屋でお会いしたご婦人は、ともに「百名山完登」を誇りにしていました。

 

百名山達成はよほどのステイタスのようで、二人のご婦人はともに仲間との山行でリーダーのような佇まいでした。

 

 

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【山の本棚11】深田久弥『日本百名山』と登山熱㊦

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ゴン

1952年生まれの69歳。 18歳で高校を卒業後、他県生活を30年余。 北海道、北陸、東京など、転勤に伴い転々とする。 退職後は2013年から自宅で小さな英語塾を開設。夫婦で小中高生や社会人と接する一方、夏秋になると北アルプス、南アルプスの山歩きをしている。 中学、大学でプレーした卓球を退職数年前に約35年ぶりに再開。地元高校のコーチは7年目(2022年4月現在)

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